熱風加熱 計算方法

熱風温度を求めたり機種選定をするための計算方法について

熱風ヒータの模式図

熱風ヒータで加熱される熱風温度をT [℃] 、この時のエアー流量をF[L/min.]、エアヒータの消費電力をP[w] とすれば、

熱風温度を求める式
T ≒ 50P/F [℃]
つまり 熱風温度T=50×(ヒータ消費電力P)÷(エアー流量F)

熱効率E(0.7~0.95)を考慮すると下式になります。
T=50EP/F

必要電力を求める式
P ≒0.02FT [w]
つまり ヒータ消費電力P=0.02×(エアー流量F)×(熱風温度T)

熱効率E(0.7~0.95)を考慮すると下式になります。
P=0.02P/(EF)

厳密には上記式の定数0.02は常温~300℃程度の範囲で使ってください。400~600℃の時はそれを0.0208に、700~900℃の時は0.0214を採用してください。


上記を簡便な公式として利用しています。

熱効率Eは一般的に熱風温度が低いと高くなり0.95以上です。熱風温度が高くなるとEは低下していき、場合によっては0.6程度にもなります。→エアーヒータの熱効率 熱効率が%表示の場合は100で割った数値で計算してください。

上式より流量Fを増やせば熱風温度は下がりますし、流量Fを減らせば熱風温度が上ります。 ただし当社の標準的な熱風ヒータでは風温度が800℃を超えますと過熱状態となり断線しますので、必ず800℃以下になるように設定してください。高温対応機種はこのかぎりではありません。

この式の定数0.02が正しいのは常温付近の場合です。空気の熱容量は温度上昇と共に大きくなっていきます。そのため正確には加熱温度に応じて0.02を補正する必要があります。定数が0.02でほぼ正しいのは200~300℃までです。400~600℃では3.5%程度多めの0.0208程度を使ってください。700℃~900℃では0.0214を使ってください。

流量Fが決められている場合には目的の熱風温度Tにするためにヒータ消費電力Pを設定する必要があります。Pが手持ちの熱風ヒータの定格電力よりも大きなものが必要な場合には熱風ヒータの機種選定を変更して、もっと大出力の機種を選ぶ必要があります。

必要電力Pが選定した熱風ヒータの定格電力よりも小さい場合には、供給電圧を下げる事で対応できます。電圧をコントロールする方法については別記したとおりです。

エアー温度が高く低流量の場合は熱効率を考慮する必要がでてきます。金属ケース入りの品種で~60%,ガラス管露出タイプで~50%程度まで熱効率が低下する場合があります。 → 熱効率

熱効率の影響が無視できない場合、P=0.02FTの式で求めた必要電力Pを熱効率で割る(除算)ことで選定すべきヒータの電力が算出できます。例えばPが1000wで熱効率が70%(0.7)と予想されれば、選定すべきヒータの電力は1000÷0.7=1429wとなります。実際には余裕をみて、この数値よりも更に大きな電力のヒータを選定します。

上記の熱風温度Tは、実際には温度上昇値です。つまりT=(T-out)-(T-in)となります。

正確にはTとは温度上昇値なのですが、通常はTを熱風出口温度として計算しても大きな問題はありません。(T-in)は0~30℃の場合が多く、T-outは800℃など高い場合が多く、(T-in)をゼロとして計算しても誤差は無視できる場合が多いためです。しかし熱風温度が低い場合やエアー入口温度が高い場合にはエアー入口温度(T-in)を考慮する必要が出てきます。

熱風ヒータ(エアヒータ)の容量についてですが、30w~70,000wの範囲で製作実績があります。また、どのような特注仕様でも可能であれば製作致します。

エアーヒータの寿命については御使用方法により全く異なる値になりますので、具体的な数値は提示できませんし、寿命についての保証もできません。一般的な言い方をすれば、御使用状態での発熱体の最高温度をパイロメータ等の非接触温度計で測定し、その温度から別紙グラフより発熱体寿命を推定します。このグラフはメーカーにとっての安全のため、かなり控えめな寿命値を提示します。実際にはもっと寿命は長いです。

また発熱体温度は熱風温度より約300℃ほど高い値になりますので、熱風温度から発熱体温度を推定する事も可能です。ただし流量によってこの温度差は異なりますので、かなり不正確な推定になります。これからすると熱風温度800℃であれば寿命は約1000時間、熱風温度700℃以下であれば寿命値は無限大に近づき、寿命は考慮しなくてよい、という事になります。ただしこれは一般的な話であり、個々の条件で大幅に異なった結果となります。電圧制御の方法によっても大きく影響を受けますし、振動や衝撃,エアーに含まれる不純物(水や油,金属粉)によっても影響を受けます。

必要電力 P=0.02FT という公式の算出方法

流量をFとし、単位をL/min. またエアーの温度上昇値δtをT[K]として必要電力P[w]を求める式を作る。尚、電力の単位(ワット:W)はJ/sと等しい。

流量F[L/min]を毎秒に直すと1/60F[L/s]

エアーの熱容量は1.01[J/g/K]

エアーの密度は1.2[g/L]

するとF[L/min.]=1/60F[L/s]

F[L/min.]=1/60F[L/s]×1.2[g/L]=0.02F[g/s]

電力P[w=J/s]=1.01[J/g/K]×0.02F[g/s])×T[K]=0.0202×F×T


つまり必要電力P=0.0202FT[w]という式が得られます。0.0202は実用上0.02でよしとしています。

必要電力 P=0.02FT [w]

この式は理論式で、熱効率は考慮されていません。熱風ヒータの場合、熱効率は0.9~0.7になるので、Pをこの数値で割ったものが実際の必要電力になります。

Tは温度上昇値です。これはT=(熱風出口温度-エア入口温度)という事になります。しかしエア入口温度は0として考えても通常は問題ないので、Tを熱風温度として考えても、ほとんど問題ありません。ただし熱風温度が低い場合やエア入口温度が高い場合にはエアー入口温度を考慮する必要があります。

上記式の定数0.02は常温~300℃付近の空気の熱容量から算出したものなので、加熱温度が高い場合には誤差がでます。空気の熱容量は100℃で約1.01J/g/Kなのですが、500℃では1.093J/g/Kになり、800℃では1.156J/gKになります。だから正確にはその熱風温度を反映させなくてはなりません。しかしここで間違えやすいのは、例えば800℃まで加熱する計算に熱容量を1.156J/g/Kを使うのは正しく無いという事てす。
なぜなら、常温から800℃までの平均的な熱容量で計算する必要があるためです。そのため簡易的には加熱温度の半分の時の熱容量を使うのが妥当でしょう。