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遠赤外線加熱に関しては一部の業者による嘘の宣伝により間違った認識を持っている人が多数おられます。一部の悪徳業者が嘘の情報を商売に利用し、それに一部の大手メーカーまで嘘とわかった上で便乗していた感がありますが、最近は多くの大手企業では改善されています。ここでは一部の悪質業者の嘘をご紹介し、科学的に妥当な(初歩的,基本的な法則で疑いの余地の無い理論に基づいた)解説を加えています。
悪質業者の嘘事例-1. 遠赤外線は物体の内部にまで浸透し加熱する →しません
遠赤外線は内部まで浸透して加熱する事はほとんどありません。ごく表面のみ(
0.1〜0.2o程度)の加熱になります。なぜなら遠赤外線は金属以外の多くの物体にきわめて吸収されやすい(吸収率が高い)からです。可視光〜近赤外線では透明な材料、例えば水やガラス,透明プラスチックなども遠赤外線領域(3〜5μm以上)では不透明になり、透過することなく表面で吸収されてしまいます。
近赤外線は可視光線に近く、可視光で光がある程度透過している様なもの(人体やプラスチック,接着剤などで半透明感のある材料)は多くの場合、近赤外線もある程度透過するので、内部まで浸透して加熱される場合があります。人体では数oです。
嘘の宣伝では「遠赤外線は波長が長いので内部まで分子運動を起こし内部から加熱される--」などと説明していますが、これは電子レンジで使っているマイクロ波などの波長の長い電磁波に当てはまることです。しかし遠赤外線は波長が長いと言っても実質的に加熱に寄与する波長はせいぜい5〜10μm(0.005〜0.01mm)程度までです。電子レンジで使っているマイクロ波(波長約120mm)とは波長が1万倍以上も違うのに、これと同様であるかのような錯覚を与える宣伝手法が使われています。遠赤外線と電子レンジのマイクロ波では物体に対する浸透度は全く違います。
もし前記宣伝が本当ならば薄い板などは遠赤外線が透過してしまい、ほとんど加熱されない、という事になってしまいますが、そんなことはない事は明白です。遠赤外線ストーブの前に薄い紙や透明プラスチック板を1枚置くだけで遮られて暖かくなくなります。近赤外線(電球や太陽の光)ならば多少は透過して裏側でも多少は温かさを感じます。
また電子レンジのマイクロ波のような加熱が全てに好都合かというと、そんなことはないでしょう。マイクロ波で人体を暖房するのは明らかに健康上の問題(白内障の危険)があり非常に危険。調理にしても卵を電子レンジで加熱すると爆発するのは良く知られた欠点です。またマイクロ波では表面だけに焦げ目を付ける事は不可能です。だからもし本当に遠赤外線がマイクロ波と同じように数cmも浸透して加熱するものであったとしたら、マイクロ波と同様の欠点をもちますので大変な事になっています。
電子レンジのマイクロ波は波長が約120mmで、物体に約7cmまで浸透します。加熱されるのは主に水分であり、油分などは加熱効率が1/10程度になります。もっと波長を長くすれば、より深く浸透するようになりますが、そうなると薄い物体ではマイクロ波があまり吸収されずに通り抜けてしまうので加熱効率が悪くなります。そのような理由で波長120mm付近というのが加熱調理にはバランスの良い波長とされています。
次の図は物体が赤外線により浸透加熱するときの状況を模式的に解説したものです。単独の厚肉材料では説明しにくいので、薄板を何枚か重ねた状況に例えています。内部まで浸透加熱するということは、最初の一枚目で完全には吸収されず、2枚目,3枚目にまで赤外線が達する必要がある、という事を解説したものです。
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※ 上図は模式図であり、光量を幅で表しています。実際の光の場合は減衰しても幅
は同じか、又は拡散により広がります。
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悪質業者の嘘事例-2. 遠赤外線放射体は常温でも温かい→あり得ない
「遠赤外線を出すセラミックが布に織り込んであるので暖かい」などという宣伝が大手メーカーの商品ですら見られましたが、これらは全くの嘘です。熱は温度の高いところから低いところにしか自然には移動しません。これは「熱力学第二法則」とよばれており、現代科学の基本法則です。
この熱エネルギーが温度の高いところから低い所にしか移動しない、というのはどのような特定の波長をとってみてみても、放射率など全く関係無しに無条件で厳密に成立します。
そして2つの物体の温度が同じであれば、熱の移動は厳密にゼロです。これはどのような波長域を取り出してみても、それぞれの波長単独で厳密に成り立っています。
また熱エネルギーは移動したり、または形を変えることはあっても、そのエネルギー総量は増えも減りもしません。これは「エネルギー保存則」又は「熱力学第一法則」と呼ばれており、これも現代科学の根底をなす法則です。
どのような条件下でもこの2つの法則に反する様な現象は全く発見されていません。電力等のエネルギーを供給しないのに熱エネルギーを放射し続けて暖かい材料などあるはずがないのは明白でしょう。
常温でも、どのような物体からも常に遠赤外線は放射されています。放射率が高いとたくさんの遠赤外線を出して周囲を温める、などという事はありません。熱の移動が起こりやすい、というだけのことです。そして前記した様に遠赤外線などによる熱エネルギー移動は温度の高いところから低いところにしか絶対に移動しません(あらゆる波長において)。
同じ温度であれば、どのような特定の波長をとってみても相手から遠赤外線エネルギーは一切受け取らないし、相手に渡す事もない。もし「特定の波長のみにおいてであれば移動が起こりうる」と仮定すれば、工夫すれば永久機関(第二種)が作れてしまう事になるが、これは熱力学第二法則で否定されています。この間違いは良心的な電熱メーカーのHPですら見られます。
この「法則」で結果が否定されているような事は、どんなに方法を工夫してみても最初から不可能な事です。特許申請してもこの法則に反するものは確実に拒否されます。しかし悪質な業者は特許申請の内容がタイトルに反して「法則に反する効果」に対しての特許申請ではなく、装置の構造などに対してのものだったりします。それで特許を取り、あたかも「熱力学第一,第二法則を無視した効果」があり、それに対して特許を得た、という様な宣伝をしている場合がありますから、余程の注意が必要です。
放射率=吸収率の関係から、遠赤外線の放射率が高い材料というのは遠赤外線の吸収率が高い材料という事でもあります。もし人体(体温)よりも温度の低い遠赤外線セラミックを人体に近づければ、人体から放射する遠赤外線をよく吸収するので、普通の材料よりもかえって冷たく感じます(温度の高い人体から温度の低い遠赤外線セラミックに熱が移動しやすい)
もっとも遠赤外線セラミックなどを使わなくてもたいていの物質は遠赤外線の放射率がセラミックと同程度に高い値を持っています。遠赤外線ヒータにセラミックを使う主な理由は高温に耐えるからです。常温ならばセラミックよりも優秀な遠赤外線放射材料はいくらでもあります。例えば人体や水や氷など。
しかしどんなに優秀な遠赤外線放射材料でも全放射率,分光放射率が1.0(100%)を超える事はあり得ません。これは大原則です。
人体も極めて高い放射率(0.98以上)ですし、水,氷,木材なども同様にセラミック(放射率0.85〜0.95)より同等以上の放射率をもちます。体温よりも低い温度の水や氷に近づいても温かくないのは誰でも経験で分かるのですが、セラミックと言われると経験が少ないだけにだまされやすいのでしょう。焼き物の茶碗や皿などもセラミックですから、その意味ではだれも経験的に分かっているとも言えますが「特殊な遠赤セラミック」という言葉でだまされるのでしょう。
金属は遠赤外線をよく反射します。人体から少し離してアルミ箔で包み込むと、たとえアルミ箔が冷たくても暖かく感じます。これは人体から放射された遠赤外線が反射されて戻ってくるために外部に逃げない、という保温効果によります。だから建築用の断熱材などは熱の伝わりにくいガラスウールや発泡体に遠赤外線の反射材であるアルミ箔を組み合わせたものがよく使われます。
だから衣服も本当に遠赤外線による保温効果を期待するのならば、セラミックを混ぜ込むのではなくアルミ箔を挟み込むか、又はアルミコーティングです。良心的な防寒や遮熱の服なり建材なりはそのようになっているはずです。マホービンも真空断熱+金属鏡面による遠赤外線反射で高い断熱性を持たせています。
常温での遠赤外線の健康効果などは加熱効果以上に悪質な嘘の宣伝ばかりといえます。赤外線には熱に変わる以外の作用は全くありません。悪質な業者は水を活性化するとか「生命維持に必要な育成光線」などという、とんでもない嘘まででっち上げて商売しています。
常温付近の物体から放射される遠赤外線(波長5〜30μm付近)ならいつでも周囲の空,大地,海などから大量に受けています(太陽光の2倍以上の遠赤外線エネルギーが飛び交っています)。もしこれらを完全に遮ぎられたらマイナス273℃に向かってどんどん冷え込みます(空気の移動がなければ)。それをもって「生命活動に必須」と言っているのなら理解できますが。
ただし、これら自然界に大量に満ちている遠赤外線放射を完全に遮断するには、マイナス273℃(絶対0度)の壁で包み込むしか方法はありません。いくらかでも温度のある壁面からは必ず遠赤外線放射があるため、遮ったことにならないからです。
以下は各種物体の常温付近における放射率(=吸収率)のデータです。セラミックが特別に放射率が高いわけでもない事が分かるとおもいます。尚、遠赤放射セラミックと称しているものも特別なものではなく、ムライト(アルミナ-シリカ)やアルミナやマグネシア,チタニア,ジルコニアなど、ごく一般的な材質です。もっともどの様な特殊な性質のセラミックであったとしても前記結論は同じですが。
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常温付近における各種物体の放射率(=吸収率)
測定物
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放射率 |
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測定物 |
放射率 |
皮膚 |
0.98 |
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セラミック |
0.85〜0.95 |
水 |
0.92〜0.96 |
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石こう |
0.80〜0.90 |
氷 |
0.96〜0.98 |
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レンガ |
0.75〜0.95 |
雪 |
0.83 |
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ガラス |
0.75〜0.95 |
プラスチック |
0.6〜0.85 |
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コンクリート |
0.91〜0.95 |
紙 |
0.7〜0.94 |
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アスファルト |
0.90〜0.98 |
木材 |
0.9〜 |
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酸化鉄 |
0.60〜0.90 |
ゴム |
0.86〜0.95 |
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酸化アルミニウム |
0.30〜0.76 |
砂 |
0.90 |
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酸化銅 |
0.38〜0.93 |
粘土 |
0.85〜0.90 |
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酸化ニッケル |
0.85〜0.96 |
12 |
12 |
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酸化チタン |
0.35〜0.60 |
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セラミック等の分光放射率グラフを見せて、あたかも数十μmの波長まで遠赤外線放射しているかのように宣伝している場合もありますが、放射率というのは、あくまで黒体放射の分光放射率を100%とした場合のその物体の放射の割合です。
放射体の温度が決まれば「温度放射の強度-波長分布」は「3.温度放射の波長」にあるグラフの通りにしかなりません。このグラフの各波長における放射強度に対してその物体の放射が何%であるか、が決まるだけです。
だからたとえ波長50μmでの分光放射率が99.99%であっても、その温度の黒体における50μmでの放射がゼロに近ければ、やはりゼロに近い放射にしかなりません。表面温度約1000K(730℃)の遠赤ヒータから放射されるのはピーク波長が3〜4μmで、10μmではピークの約1/10の放射となり、20μmでは約1/100になり50μmでは1/1000になります。悪質業者は「1/1000でも出ていれば「出ているといっても嘘にはならない」との論法で騙していますが、実質的には1/10以下の領域はほとんど意味はないので、遠赤ヒータはせいぜい10μmまでしか出ていない、と言うべきです。
悪質業者の嘘事例-3.遠赤ヒータは暖房効率が良い→経済性は良くはない。
暖房用としての電気ヒータは経済性が良いとは言えません。同じ1kwのヒータならば1kwの熱エネルギーしかでてきませんので、遠赤ヒータを使おうが近赤ヒータを使おうが大差ありません。同じ熱量を得るのに必要な電気代は石油の2.5倍程度です。尚、電気式の空気暖房(温風式やオイルヒータと称しているタイプ)は人体への直接暖房ではないのでロスが大きく、電気ヒータの中でも暖房コストが最悪ですので、省エネ(CO2削減)と経済性の観点からは使うべきではないでしょう。
下記は電気,都市ガス,灯油について1MJ(メガジュール)あたりの価格を調べたものです。(2008年1月調べ) それぞれの価格は価格変動が大きく、また業者や使用量により価格差が大きく、比較が困難な面もありますが、大まかには平均に近い価格だと思われる価格です。
電気価格 ¥25/kwhとすれば約6.9円/MJ
ガス価格 約3.5円〜6円/MJ(ガスは特に価格差が大きい)
灯油価格 約100円/Lとすれば約2.7円/MJ
電気でヒートポンプ(エアコン)にすれば1.5円〜2円/MJとなり、更に深夜料金が使えれば0.5円〜0.7円/MJになる。
電気ヒータによる暖房は上記の様に電気価格が他のエネルギーに比較して2〜3倍も高いので、部屋全体の暖房には非常に経済性が悪いという事になります。ただし、局所又は短時間暖房用としては優れています。特に人を感知するセンサーと組み合わせて、人がその場所に来たときだけ即点灯して局所暖房するランプヒータ(近赤)は常時使用しない場所の局所暖房(例えばトイレや脱衣所,キッチン用)として非常にエネルギー効率が良く、今後広く普及していくだろうと思います。
コタツのような閉鎖系では吸収率は関係なくなるので、熱効率はどんなヒータでも同じになります。それならばヒータ自身の立ち上がりの早いランプヒータが使い勝手の点でベストだろうとおもいます。尚、このような局所閉鎖系の暖房には電気以外のヒータ(例えばガス)は安全性の面で検討対象外となります。またコタツは人体を暖房するという目的に対し無駄が少ない方式なので、高価な電気エネルギーを使ったとしても経済的です。
全体暖房の本命はヒートポンプ(エアコン)です。これは供給した電気エネルギーの3倍以上、最新式では5倍程度の熱エネルギーが得られ、石油よりも安いエネルギーコストとなります。さらに深夜電力料金(約1/3)をうまく利用すれば圧倒的な低エネルギーコストになります。そしてエアコンの熱効率は更に進化中です。ヒートポンプを使わない石油やガスの暖房は熱効率が向上することはあり得ない(現在で既に熱効率100%でこれ以上は無い)ので、差は開く一方です。尚、ガスや石油でも、それらを使ったヒートポンプ暖房は経済性が非常に優れています。ただし設備費用を考慮すると、どうなるか分かりません。
「エアコンは供給した電気エネルギーの3倍以上の熱エネルギーが得られる」と言うと、エネルギー保存則(エネルギーは増えたり減ったりしない)に反するかに見えますが、これは外部の空気の熱エネルギーを室内に移動させているためで、エネルギー保存則には反していません。つまり室内の熱エネルギーが増えた分は室外の熱エネルギーが減っているので帳尻が合います。
よくエアコン暖房は温かくない、と言う話を聞きますが、多くの場合エアコンは高所に取り付けてあるので、部屋の空気の攪拌不足があると温かい空気が天井付近にたまり、足元の空気が冷たいためです。特に日本家屋では床下を外気が通り抜ける様な構造となっており、足元が冷えやすい傾向があります。
これは扇風機や攪拌ファン付きの照明器具などを併用すれば簡単に解消します。そしてこれは扇風機を動かす電気代よりもはるかに大きな節電効果があります。ただ、風が直接人体にあたらないような工夫は必要です。部屋全体の空気が大きく循環して天井付近の空気と床付近の空気が入れ代わる様にします。
もう一つの要因は湿度が低すぎる場合です。エアコン暖房の場合には加湿が必要な場合が多いです。加湿機能付きのエアコンもありますが、付いていなければ加湿器が必要です。加湿により快適温度が下がるので暖房を弱める事ができ、加湿器の消費電力はある程度打ち消されるという事もありますが、なによりも快適性の向上,風邪の予防,治療効果が大きいというメリットがあります。
結論的には全体暖房はヒートポンプ(エアコン。できれば深夜電力利用)を採用し、補助的な局所,短時間暖房としては人体センサー付きの近赤ランプヒータ(カーボンヒータ含む)の採用がベストと考えられ、それに高断熱の技術とエネルギーロスの少ない換気,空気浄化システムの組合せが暖房の進化の方向であろうと思います。
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遠赤外線関連業者団体の説明として
>「遠赤外線は体に深く浸透するので体の芯から温かくなる」というように書かれた暖房器
>具の広告が見受けられますが、間違いです。遠赤外線の持つエネルギーは、皮膚表面から
>約200μmの深さの中でほとんど吸収されてしまい、熱に変わります。その熱が血液などに
>より体の内部(芯)まで効率よく伝わり体を温めているのです。近赤外線は、皮膚表面か
>ら数ミリメートルの深さまで浸透します。
このように書かれています。遠赤外線が体の内部に浸透しないという事は認めているので、ある程度科学的には見えますが、体の表面を温めれば、その熱が血流で体の内部まで伝わるのは当然の話であり「遠赤外線だから」ということではないでしょう。これ以外にも一見科学的な説明に見えてごまかしが混じっています。常温遠赤外放射体の保温効果まで肯定しています。これらは分かった上での業者保護対策でしょう。「加熱効果」と言わずに「保温効果」といっているのが微妙ですが、しかしいずれは不当表示での摘発は避けられないだろうと思います。
この様な業者は決まったように人体のサーモグラフィを使ってあたかも効果があったかの様に装いますが、原理的にあり得ない事を有るように見せようというデータなのですから、どこかに捏造があることは確かです。
それに人体の皮膚表面温度は感情一つでも大きく変化する微妙なものです。それらの不安定要素を排除するには数百以上の二重盲検比較試験データが必要でしょう。ごまかすのではなく本当に効果を示したいのであれば人体を模した試験体2体を準備し、それを例えば37℃に加熱し、それぞれに普通の服と遠赤セラミック入りの服で包んで、10℃の同じ室内で温度の下がり方を比較測定すれば済むことです。2体の試験体の製作誤差は服を入れ換えて再実験し、データを平均することで打ち消すことができます。
また「遠赤外線は内部に浸透しない」という事を認める代わりなのでしょうが「遠赤外線だと内部までよく加熱される」という宣伝文句を無理やり正当化するために「内部への熱流が高く維持される」といったゴマカシも行われています。内部への熱流は単純な熱伝導の問題ですから、表面温度と内部温度の温度差にほぼ単純比例です。内部への熱流を多くするには表面温度をいかに高く維持するか、という事にしかなりません。これも「遠赤外線だから」という話ではありません。
内部への熱流を多くするために表面温度を上げすぎると焦げるとかいった弊害が発生する場合があります。そのため、内部まで温度を上げるには「長時間かけて加熱する」しかないのが本当の所です。そして「遠赤外線は内部まで加熱される」という誤解が生れたのも、遠赤外線はゆっくりとしか加熱できない(エネルギー密度を高くできない)ためです。近赤ヒータはゆっくりでも早くでも加熱できますが、設定が悪いと早くなりすぎる場合もあるでしょう。ガスの直火などは明らかにエネルギー密度が高すぎ、内部に熱が伝わる前に表面が焦げてしまいます。
ただしこれは厚肉の食材とかの場合であり、金属などは速やかに内部に熱が伝わりますので高エネルギー密度で急速加熱できます。液体などで対流の起こるものも急速加熱可能です。
物体の表面温度は蓄熱分を無視すれば供給エネルギーと放熱エネルギーがバランスしたところで決まります。そして供給エネルギーは赤外線加熱の場合、照射エネルギー密度[w/cm^2]
と、それの吸収率の積で決まります。
それに対して加熱対象物の放熱エネルギーは温度上昇とともに急激に増加していきます(おおざっぱに言って温度の2〜3乗に比例して増加→[図−4]参照)。
この2つがバランスする温度は遠赤外線ヒータの場合、最大300〜400℃であり、近赤外線ヒータ(ランプヒータ)の場合は最大で1400℃程度になります。太陽光の場合には最大約3000℃にもなります。
もちろんこの温度は高い方が好都合で、良質な光エネルギーと言えます。なぜなら高いものを減らす方向のコントロールは簡単だからです。例えば反射板の形状で光を集めすぎない様にするとか電力を減らすとか距離を調整するなど。安全性は太陽光に特に危険を感じない事からも分かると思います。太陽光は高精度放物面鏡で光を集めれば最大3000℃にできるというだけであり、普通に太陽光にあたるだけでは火傷の危険もありません。これはハロゲンランプヒータでも同じです。
物体をある温度に加熱するには十分な照射エネルギー密度を与えて短時間で加熱してやる方がエネルギー効率は一般的に高くなります。照射エネルギー密度が低いと目標温度に達するまでに時間がかかるため、その間の放熱エネルギーがロスとなります。近赤外線ヒータは遠赤ヒータの数十倍のエネルギー密度を与える事が可能なため、多少の吸収率の差など問題にならないほど圧倒的な熱効率の差が出る場合が多いのです。
また熱風加熱は加熱対象物が熱風温度以上にはならない、というのが大きなメリットでもあります。600℃の熱風を吹きつけると素早く600℃近くに達し、その温度を維持します。また熱風の回り込みがあるので、吹きつけたところの反対側まで加熱される場合があります。このようなところが赤外線加熱に対する熱風加熱の大きな特徴です。赤外線加熱では影になるところは加熱されません。
これらは加熱目的によりメリットにもなりデメリットにもなる要素です。要は如何に目的に合った加熱手段を選ぶかの問題です。
当社は近赤外線加熱も遠赤外線加熱も熱風加熱も行っていますが、実績的には多くの場合、熱風加熱か近赤外線加熱が採用されます。その中でも約
3:1で熱風加熱が多いです。このようなことは簡単な実験をやってみればすぐに結果の出る事ですから、あやしげな業者の宣伝に惑わされることなく実験で確認されることをお勧めします。弊社に来ていただいても実験できます。
尚、2011年現在では大手メーカー製品に関しては「遠赤外線」や「マイナスイオン」の宣伝は大幅に改善されています。
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